父の死を悼む家族の絆に涙。個体数が減少するゾウの飼育について聞いてみた【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】

東京ウォーカー(全国版)

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いまだ後を絶たない密猟。野生の環境も厳しい

――一方、野生のアフリカゾウはカウントが開始された1970年ごろは100万頭くらい生息していたと言われるが、現在は40~50万頭と、やはり半数以下に減少している。

まず象牙を狙った密猟や環境の変化が、その要因として挙げられます。それに加え、アフリカでは保護区を多数設けていますが、保護区はパッチワーク状になっているため、ゾウがそこから出てしまうと人間の集落に入ってトウモロコシを食べたり、畑を荒らすこともあったりして、人間との軋轢も出てきます。

保護区では保護されているため、今度は飽和状態になってしまう。現地では、バランスを考えながら別の保護区に移動させるなどのプロジェクトもあります。

アジアゾウはもっと少なく、野生の生息数が推定3.9~4.3万頭。観光や農耕用で家畜化されている個体が1万頭といわれているので、人間との関係性を改善しないと、今後も厳しいと感じます。

動物園は自然への扉。貴重な一次資料をじっくり観察して

――ゾウの魅力は巨大な体と大きな耳、長い鼻。実はゾウの鼻にも右利きと左利きがあるのだという。

椎名修さんは34年にわたりゾウの飼育を担当してきた。ゾウの家族にとっては椎名さんも群れの一員だ写真提供:椎名修


ゾウが鼻で物をつかむときに、右側から巻いていくか、左側から巻いていくか、個体差があります。ご飯の時に木の枝をはさむ牙にも、右利きと左利きがあるんです。そのような違いも足を止めて見ていただければ、面白いと思います。親子で動物園を訪れると、両親は動物よりも子供を見ていて、子供たちはパッと見てすぐに次の動物に移動してしまう。しかし子供たちに観察を促して5分でも10分でも足を止めて見ていただくと、動物のことがもっと理解できると思います。

動物園は博物館の類似施設ですが、博物館の一次資料ははく製や骨格標本。対して動物園の一次資料は、生きている動物です。できれば動物園に来て、目の前で生きている動物たちを見てもらいたいというのが私たちの願いです。

愛媛県立とべ動物園の正面入口ゲート写真提供:愛媛県立とべ動物園


動物園は宇宙船地球号の中の数限られた命を預かる箱舟の一つ。みなさんと共有する財産である動物たちを預かっています。彼らと今後も一緒に生活するためにも、動物園は必要な施設です。動物園は自然への扉。それを知っていただくため、動物たちが生活できる環境の保全と環境教育に主眼を置き、私たちは努力を続けています。

雑誌や写真、テレビでは感じえない動物たちが、あなたの近くの動物園にもいます。実際に彼らを見て、においや声、息吹を五感で感じて、動物をもっと愛してもらえればうれしいです。

取材・文=鳴川和代

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