磯村勇斗「現実に起こりうるかも」自らの生死を選択可能…高齢化社会に一石を投じる衝撃作が公開

東京ウォーカー(全国版)

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撮影=小嶋淑子

『ヤクザと家族 The Family』と『劇場版 きのう何食べた?』で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、4月期のドラマ「持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜」では上野樹里演じる主人公の幼なじみ役を好演中の磯村勇斗。彼の最新出演作『PLAN 75』は、75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を保障し支援する制度<プラン75>が施行され、その制度に翻弄される人々の姿を描いた衝撃作となっている。本作で「プラン75」の申請業務を担当する市役所職員・岡部ヒロムを演じた彼に、撮影秘話や役柄について、さらには舞台「泥人魚」での共演者とのエピソードなどを語ってもらった。

「もしかしたら現実に起こりうるかもしれない」と思った作品

――最初に脚本を読んだ時の感想からお聞かせいただけますか?

【磯村勇斗】「プラン75」という制度は“もしかしたら現実に起こりうるかもしれない”と思いましたし、いますでに少子高齢化が進んでいる中、僕自身もその問題について考えることもあったので、とても興味深く脚本を読ませていただきました。あと、本作をご覧いただくとわかると思うのですが、近未来っぽい世界観でこの物語が展開していくんですね。そこもすごく魅力的だなと思いました。

――市役所の職員であるヒロムを演じる際に、どんなことを大事にしましたか?

【磯村勇斗】「プラン75」を推奨して加入してもらうのがヒロムの仕事なので、前半では年配の方々に丁寧に優しくプランの説明をしている姿を意識して演じていました。ただ、彼は「プラン75」という制度に対して100%賛同しているわけではないと僕は思っていて、だからこそ、たかお鷹さん演じるヒロムの伯父の幸夫が「プラン75」に加入したと知った時から心が揺らぎ始めてしまうんです。そういったシーンごとのヒロムの心情の変化を、早川(千絵)監督と相談しながら演じるようにしていました。

(C)2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

市役所職員の岡部ヒロムを演じた磯村勇斗撮影=小嶋淑子


――具体的には監督とどういったお話をされたのでしょうか?

【磯村勇斗】前半に出てくるお年寄りに「プラン75」の説明をするシーンでは、“どこまで業務的にやったらいいのか”“どのぐらいの明るさでお年寄りと接するべきなのか”とか、そういったことを確認していました。物語の後半では久々に再会した伯父さんがすっかり老人になっていて、「プラン75」に加入して死ぬ意思を持っていることをヒロムがどう感じているのかとか、伯父さんを止めたい気持ちもあるけどできないという葛藤について監督に細かく確認しました。

ただ、「それは芝居で見せる必要はない」と監督がおっしゃったので、自分の中で落としどころを見つけながらやっていましたね。

――ヒロムと伯父さんのシーンはどれも印象に残りました。たかお鷹さんとは現場でどのようなお話をされましたか?

【磯村勇斗】確かクランクインの時に、たかおさんが「あんまりしゃべらないようにしような」とおっしゃったのですが、それはヒロムと伯父さんは久々に再会するという設定で、それまでまったく連絡も取ってなかっただろうから、僕らがしゃべりすぎてしまうと役に影響するかもしれないという配慮あっての言葉なんだろうなと思いました。

それで現場では少し距離を置いていたのですが、撮影が進むうちにたかおさんと自然と話をするようになって、気付いたらめちゃくちゃ仲が深まっていましたね(笑)。でも、だからこそヒロムが伯父さんの家で一緒にご飯を作るシーンは、お客さんに二人の和やかな空気感が伝わると思います。

映画『PLAN 75』場面写真(C)2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

撮影=小嶋淑子


自分が監督として映画を撮るならば「いま現実に起きていることを反映したい」

――主人公・角谷ミチを演じた倍賞千恵子さんとのお芝居はいかがでしたか?

【磯村勇斗】倍賞さんとは短いシーンの中でも目を合わせることが多かったせいか、“目に魅力がある方”という印象を受けました。台詞がないシーンでも“目で語る”ということをされていたので、俳優にとってそれはすごく大事なことだなと勉強になりました。

でもカットがかかった途端にチャーミングな笑顔を見せてくださるので、 “さっきまであんなに力強い目をしていたのに!”とギャップに驚きましたが、とても素敵な方だったのでご一緒できてうれしかったです。

――WOWOWアクターズ・ショート・フィルムで磯村さんが監督された短編映画『機械仕掛けの君』では、アンドロイドが進化した近未来社会が舞台になっていて、こちらも『PLAN 75』同様に実際に起こりうるかもしれない物語だなと思いました。クリエイターとして普段から意識していることはありますか?

【磯村勇斗】やはり自分が監督として映画を撮るならば、“いま現実に起きていること”を反映したいという気持ちがあります。普通の人間模様を描いても物足りなく感じてしまうような気がしますし、“何か大切なことを伝えたい”とか“平和な世界にしたい”という思いをどうやって作品に落とし込んでお客さんに見せていくかということに興味があります。

撮影=小嶋淑子


――いずれ映画化したいという題材のアイデアも増えていますか?

【磯村勇斗】増えています。ただ、ニュースで取り上げてられている問題だけをピックアップして脚本に起こしても薄っぺらいものになってしまうので、映像作品にするならば本腰入れて調べないといけないですよね。僕が興味を抱くようなことって、エンタメ作品にするのが難しい題材が多いので、もっと映画というものをしっかり学んでからじゃないと無理かなと思います。

――最近ご覧になった作品の中で社会問題を扱ったおもしろい映画はありましたか?

【磯村勇斗】Netflixで観たアダム・マッケイ監督の『ドント・ルック・アップ』はよくできているなと思いました。脚本が秀逸で、あそこまでブラックジョークを盛り込みながらもしっかりと政治批判や社会問題を扱ったエンタメ作品ってなかなかないんじゃないかなと。俳優仲間でこの作品について話していた時に、「日本でこういう映画を作るのは難しいよね」という意見が結構あって。

だけどその現状を変えていかないといけないし、映画だからこそ伝えられることがたくさんあるので、『ドント・ルック・アップ』のような作品をいつか作れるような環境にしていきたいですね。

――『ドント・ルック・アップ』は誰をモデルにして書かれたキャラクターなのかわかりやすかったですよね。例えばマーク・ライランスが演じたIT企業のCEOはイーロン・マスクっぽかったり(笑)。

【磯村勇斗】めちゃくちゃわかりやすかったですね(笑)。だからこそリアリティを感じながら観られるところがおもしろかったです。日本でそれをやるのはなかなか難しいと思いますが、僕らの世代で実現できるように頑張ります(笑)。

撮影=小嶋淑子


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