地域活性化から1次産業の支援まで。コミュニケーションをデザインする株式会社STORYの取り組みとは

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

コロナ禍を経てリモートワークやオンライン会議が一般的になり、ECサイト市場が伸長するなど、オンラインの世界が一気に拡大した。一方で、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行されたことを契機に、リアルな世界にも人は戻ってきている。

「人が集まる場所を作っていくことは、地域力創出につながる」と話すのは株式会社STORYの代表取締役の潮政彦さんだ。潮さんは、1992年に株式会社エムズプランニングを設立。数多くの新規事業の立ち上げや、商業施設の運営管理、国際会議や大規模屋外イベントのオーガナイザー業務を手掛けてきた。エムズプランニングを退いたあと、2016年に株式会社STORYを立ち上げ、プロモーション事業からエリアマネジメント事業まで幅広い分野で活動している。なかでも一番力を入れているのは「江戸東京野菜とジビエ」なんだそう。潮さんがなぜSTORYを立ち上げ、「江戸東京野菜とジビエ」に行き着いたのか話を聞いた。

株式会社STORY代表取締役の潮政彦さん。イベントプロモーションを中心に、コミュニケーションの場所を創出し、デザインしてきた【写真提供=株式会社STORY】


経験・ノウハウを次世代に引き継ぐためにセミリタイアからの復帰

潮さんがエムズプランニングを立ち上げたのは33歳のとき。そこから25年間、代表取締役としてプロモーション事業の第一線に立っていた。

「25年間やってきたので、きりがいいところで一旦休んで後輩に譲ろうということで、エムズプランニングを退く決断をしました。その後6カ月ほどあくせくせずにフリーでイベントのプロデュースをしていたのですが、エムズプランニング時代、広告代理店を通さずにクライアントから直接仕事を受けていたということもあって、継続してプロモーションをしてほしいというオーダーがありました。ただ、クライアントである大手企業とやりとりをするとなると、個人での受注はできない、法人である必要があるということで、STORYを立ち上げました。そしてもうひとつ大事なこととして、25年間で培った経験や知見、ノウハウを次世代につないでいきたいという想いがありました。自分の持つネットワークを次世代に受け渡すことが社会貢献にもなるだろうと考えたのです」

次世代の継承を意識することになったのは、エムズプランニング時代のパートナー企業「CO-WAKU(コワク)」という会社との出会いも大きかったという。

「UR都市機構の案件で知り合った当時、26歳という若い2人がやっていた会社でした。ここをバックアップしていける体制にしていきたいと思い、一緒にジョイントして会社をやり始めました」

長年、イベントや大型施設などの人が集まる場所のプロモーション事業に携わってきて「現代はリアルなコミュニケーションが縮小している」と潮さんは感じている。

「ネットの普及やSNSの発達に伴って、今、この瞬間でもウェブを使えば地球の裏側にいる人と話をすることもできて、タイムレス、ボーダレスになってきていますし、エリアも拡大している。一方で、リアルなコミュニケーションは縮小してきていると思います。では、どうやったらエリアの拡大とコミュニケーションの拡大が両立できるのか。そこでキーとなるのがコミュニティの“場作り”。商業施設、文化・公共施設、企業のショールーム、コワーキングスペース、研究施設などさまざまな形態がありますが、そうした拠点を作ることが大事だと考えています。魅力的な拠点があると周辺にも公園などの公的空間が整備されて、次第に集客の要になっていきます。地域としての魅力が高まることで、定住化や観光化が進んで、個性を持った地域として成立していきます」

具体的にはどんな事業があるのだろうか?

多摩ニュータウンで行われた「ランタンフェスティバル」の様子。色鮮やかなランタンが幻想的な空間を演出【写真提供=株式会社STORY】

「現在、STORYでは4つの事業を展開しています。まずはプロモーション事業。式典やイベントの企画演出プロデュースや、セミナーや国際会議の企画運営プロデュースですね。具体的には、1970年代、多摩ニュータウンをはじめとした団地が各地で作られました。団地が立つと人の出入りが激しくなります。引越しの際に畳の張り替えがあったりしたことから、ニュータウン内には畳や襖のショールームがありました。しかし、高齢化が進み、空き部屋が増え、団地の住人が少なくなると、こうしたショールームはお役御免となりました。そして、居住者の高齢化が進み、遠出が少なくなり、身近にちょっと出かけたりするようなコミュニティ空間がないという問題がありました。そこで、ショールームをコミュニティ施設に代わり、人が集まる空間づくりをしようということで、ベトナムランタンを飾る“多摩ランタンフェスティバル”を企画しました。ただランタンを飾るだけではなく、キッチンカーを呼んだり、アーティストにライブパフォーマンスをしてもらったりと、空間全部をデザインすることで、コミュニケーションの場所を構築しています」

ランタンフェスティバル以外にもクリスマスのイルミネーションなど、SNS映えスポットにもなるようなイベントをやることで、「居住者の方が孫を呼んだりするような機会にもなっています」と潮さん。

2018年、栃木県佐野市で「佐野市国際クリケット場」のこけら落としイベントとして「サマーピクニック&クリケットin佐野」を企画【写真提供=株式会社STORY】

「ほかにも、神田明神(東京都千代田区)の文化交流館『EDOCCO』のオープニングイベントも手掛けています。神田明神にお参りにくる方以外にも、若者を集めたいということで、ホールが作られました。秋葉原にも近いですから、アニメ関連のイベントを仕掛けています。アニメイベント目当てで来たのだけど、せっかくだからお参りもしようという気持ちを醸成し、若者と神社のコミュニティゾーンを作って展開しています。それから、栃木県佐野市にある佐野市国際クリケット場のこけら落としイベントにも関わりました。日本ではマイナーなクリケットですが、イギリス、オーストラリア、インドで人気の競技で、競技人口は世界第2位といわれ、2028年のロサンゼルスオリンピックでは正式競技になることが決まっています。佐野市に日本クリケット協会の本部が移転してきたことをきっかけに、佐野市ではクリケットが街を活性化させると考え、廃校のグラウンドを日本初の国際基準を満たしたクリケットグラウンドにしたんです。こけら落としではクリケットが盛んな国の大使館を招いて、対抗戦を開催しました」

潮さんが話していたように、コミュニティの拠点を整えることによって、人が集まり、街・地域が賑わっていく好例なのだろう。

「2つ目は知的対流施設の企画・運営事業。商業、文化、公共施設の企画運営管理やショールームシェアオフィスの企画運営管理です。具体的には、大手町にある会員制コワーキングスペースの『3×3Lab Future(さんさんラボフューチャー)』のビジネス交流促進業務があります。異業種の人が交流することで、新しいビジネスを生む場所になっています。3×3Lab Futureはスタートアップ企業も含めて多種多様な方が集まっています。ほかに、トヨタショールーム『メガウェブ』の施設運営管理やパナソニックのショウルームの管理運営などもしていました。3つ目がエリアマネジメント業務。公園や広場などの公的空間の企画運営プロデュースや地方創生の企画運営プロデュースがあります。こちらで代表的なのは大手町・丸の内・有楽町エリアで開催している『エコ結び』でしょうか。対象エリアの参加店での支払いをSuica・PASMOにすることで、環境活動支援の基金になるという取り組みです」

  1. 1
  2. 2

この記事の画像一覧(全6枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

花火特集

花火特集

全国約800件の花火大会を掲載。2024年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

花火大会人気ランキング

ページ上部へ戻る