コーヒーで旅する日本/九州編|日本一の称号に頼らず、本質を求めて。2人で歩むことを決めた「珈琲カド」

九州ウォーカー

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コーヒーの本質ってなんだ?

豆売りは100グラム〜。200グラム購入でディスカウント

「珈琲カド」ではブレンドがメイン。ハウスブレンド2種とシーズナルブレンド1種を基本用意し、スペシャルビーンズと銘打ったシングルオリジンなどもスポットで出している。これは久保田さんの考えによるところもあるが、その商品ラインナップのバランスや焙煎度合いに関しては、共同経営者の樋口さんの多様な経験も生かされている。久保田さんは「樋口はコーヒー業界に身を置いていたわけではないですが、だからこそ逆に私とは違う視点を持ってアプローチしていると感じています。長くホテルやレストラン業界にいたことから、ワインに造詣が深いのも強み」と評価。

ハンドドリップコーヒーは500円〜。豆によって価格が変わる

そんな樋口さんは「コーヒー業界のここ数年の流れは、いち消費者として見てきていて、なんとなく違和感を感じていたのが正直なところなんです。なんというか、スペシャルティコーヒーが持つフレーバーといった部分に重きが置かれすぎて、そこが独り歩きしているような…。時として浅煎り一辺倒になっていた時期もありましたが、それもやはり疑問でした。だから、久保田にはトレンドに左右されない本質を大切にした味作りが必要なのでは、とアドバイスしました」と話す。

自宅での抽出の仕方など、久保田さんのアドバイスもぜひ聞きたいところ

そうやって生まれたのが2つのハウスブレンドだ。中煎りのカドブレンドはとにかく酸味・甘味・コクのバランスに秀でた味わいを意識。そこに樋口さんが持っているワインの知識や意見も参考にしながら、エチオピアナチュラルをベースにするなど華やかさもプラスしている。もう一つのハウスブレンドがキッサテンブレンド。こちらは喫茶店のコーヒーにリスペクトを込めて、ローストによって生まれるコクを重視しながら焙煎している。ともに“日常的に飲む”ということに重きを置いており、これからも「珈琲カド」の名刺代わりになるようなブレンドにしていきたいと、その存在意義は明確だ。

真逆の2人だからこそできること

久保田さんと樋口さんは小学校の時からの友人。今ではお互いを高め合う存在に

久保田さんはジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップで日本一になるぐらい一つのことを突き詰めるタイプ。一方、樋口さんはさまざまな場所で多様な経験をしてきたこともあり、俯瞰して冷静に物事を見ることができる。ゆえに久保田さんは「私一人だったら、きっと考えすぎて行き詰まることもあると思うんですが、樋口が違った見方、考え方を提案してくれることで、店としては格段に広がりをみせていると思っています。実際、店を開いてから、わざわざこんな辺鄙な場所まで豆を定期的に買いに来てくれる常連さんもついてくださっていますし、卸し先も少しずつ増えてきています。それって当店のコーヒーを日常的に飲みたい、提供したいと思ってくださっている証だと私は感じていて」と話す。

【写真】のどかな田園地帯にポツンとたたずむ「珈琲カド」

もうすぐ実店舗をオープンして丸1年が経つ「珈琲カド」。店にはジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップの優勝者の証であるトロフィーは置かれていない。これもまた樋口さんのひと言があったから。

「実績としては素晴らしいし、この店を初めてのお客さまに知っていただく上では大きなフックになる。だけどそれって焙煎・豆売りを主とした『珈琲カド』が目標とする、コーヒーの本質の追求とは真逆のアプローチにならないか」。小学校からお互いをよく知り、さらに社会に出てからも親交を深めた2人の信頼関係の深さ。お互いをリスペクトし合っているからこそできる日々のディスカッション。久保田さんは樋口さんという最高のパートナーを得て、「珈琲カド」だからこそできるコーヒーの楽しみ方の提案を、これからも続けていく。

機会があればイベントにも出店。焙煎所兼店舗に久保田さんが立ち、樋口さんが催事を担当するシーンも多い


久保田さんレコメンドのコーヒーショップは「小さな焙煎所 花待ち雨珈琲」

「福岡市・六本松にある『小さな焙煎所 花待ち雨珈琲』。店主の安川さんは2019年のジャパンハンドドリップで4位、さらに2020年には見事準優勝に輝くなど、確かな技術を持つバリスタです。少し前にイベントで安川さんがドリップしたコーヒーをいただいたのですが、これがすごくおいしくて!こんな味わいを引き出せるのかと、正直驚きましたね。会う度に刺激をいただくバリスタの一人です」(久保田さん)

【珈琲カドのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル半熱風式1キロ
●抽出/ハンドドリップ(Kalitaロト)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム850円〜


取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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