原作者・浅倉秋成さんにインタビュー!人気小説『六人の嘘つきな大学生』が映画化

東京ウォーカー(全国版)

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『六人の嘘つきな大学生』作者の浅倉秋成さん

2021年に刊行されるやいなや「2022年本屋大賞」ノミネートをはじめ、さまざまなランキングを席巻。現在までに累計45万部を突破している浅倉秋成さんの大ヒット小説を実写映画化した『六人の嘘つきな大学生』が11月22日(金)に公開される。そこで今回は、既に試写も観たという浅倉さんにインタビュー!作者としての現在の心境などを聞いてみた。

役者さんの芝居が乗ることのすごさ、説得力の違いを感じた


――映画化おめでとうございます!「映画化されます」と初めて聞いたときの心境はいかがでしたか?

【写真】『六人の嘘つきな大学生』は2024年11月22日(金)に劇場映画化が決定している話題作


【浅倉秋成】映画化は初めてでしたので、シンプルに、まずとんでもなくうれしかったですね。メディアミックスが小説のゴールとは限らないんですが、自分の作家人生の中ではとても誉れ高いことなので。文句なくうれしかったです。

――既に試写で映画をご覧になったと伺ったのですが、少し感想を教えてください。

『六人の嘘つきな大学生』は、タイトルの通り、人生の大きな転換期である就職活動の〈嘘〉に切り込んだ物語


【浅倉秋成】すごくおもしろかったです!事前に脚本をいただいて、「そこはこうなんじゃないですか?」といった意見をいくつかお伝えしていたんですが、でき上がった映画を観ると、脚本で読んだときと、人が動いた映像を観たときで印象が全く違ったんですね。活字と映画の違いというか、役者さんの芝居が乗ることのすごさというか、説得力の違い……そういったことを感じまして。セリフも、文字だけだとこことここってあんまり噛み合っていないような気がするなと思っていたシーンも、役者さんの演技を映像で観ると、すごく自然なんですよね。そういうところがまずおもしろかったですし、1つ勉強になったなと思いました。

あまり客観的に見られないような頭にはなっているんですけど(笑)、この作品は映像に向いている部分と、向いていない部分があったと思います。でも、本当にすごく上手に整えていただいたなと。『六人の噓つきな大学生』を書き上げた時、皆さんに読んでもらうまでどんな感想が来るのか微塵もわからなかったんですが、それと同じように、今回の映画もどのような受け止められ方をされるのか全くわかりません。でも、どう受け止められたのか、感想を聞くのを本当に楽しみにしています。

――今、映像になったときのおもしろさについて伺いましたが、小説が脚本になった段階では驚きなどありましたか?

【浅倉秋成】小説をそのままきれいに映画にしたとしたら、多分長大な映画になってしまうと思うので、どうしてもシーンをカットせねばならないという事情があるのはわかっていますし、小説の中には“インタビューシーン”が挿入されているので、それを映画にするとなったらどうするのか?というようなところで、いろいろと練る作業は必要かな?とは思っていました。

でも、そういうことを予想していたからこそ、悪い意味での驚きはなにもなかったです。ここを削って、こういうサイズでいくんだ、というように納得しながら観ていましたね。こうせざるを得ない、その選択をしなければならないんだろうなと。この作品の核を残しつつ、上手く処理してくださったな、上手くスリムアップしてくださったなと感じています。

ものすごく豪華!これは大ごとだなと思いました(笑)


――先日、映画のほうには浜辺美波さん、赤楚衛二さん、佐野勇斗さんのほかに、山下美月さん、倉悠貴さん、西垣匠さんが出演することも発表されました。情報解禁されたこのメインキャスト6名について、どのように感じられていますか?

いよいよ六人の“嘘つき”が出そろった


【浅倉秋成】ものすごく豪華な方々が集まってくださったなと感じています。正直、そこまで僕は俳優さんに明るくないんですけど、そういう僕でも知っているような方々がズラリと集まってくださって、これは大ごとだなと思いました(笑)。

単行本も文庫も雪下まゆさんという方に表紙の絵を描いていただいているんですけれど、実は単行本を刊行する際に「登場人物のイメージになっている人はいますか?」と聞かれたんですね。その時に僕、というか編集者の方と、主人公・嶌衣織は浜辺美波さんのイメージですって言ったんです。年齢は違ったりするんですけど。

そんな嶌を現実に浜辺さんに演じてくださることになって感慨深かったです。あと、ちょっとずつ誰が演じるのかが発表されていく感じ、1つずつシルエットが出て明らかになっていく感じは、結果を知ってはいるものの、僕もワクワクしますね。

以前、舞台版のキャストの方を見た時も、その瞬間に、小説の登場人物のイメージがその人たちの顔になっていくような感覚がありました。多分、読者の皆さんが映画版を観たら、同じように小説を読む際に映画版キャストのイメージに影響される部分も出てくるんだろうなと思います。

――撮影現場を視察されたとも伺いました。いかがでしたか?

【浅倉秋成】すごく得難い貴重な体験でした。自分は、会議室で会議をしているシーンの撮影中に伺ったんですが、スタジオの中に会議室のセットが組まれていたんです。セットの中に入って見学することはできないので、カメラで撮影した映像を、セットの外で監督さんたちと一緒に見ていました。すごい!浜辺さんだ!と思いながら(笑)。ですが、映像越しでも生の演技のすごさのようなものは伝わりました。

それにセットを見られたことなども、感動しましたね。僕は「会議室」という文字を打っただけですが、その会議室が本当に存在していることが不思議でした。中で写真も撮らせていただいちゃいました(笑)。

――これから映画化きっかけで新たに小説を読む読者もいるかと思います。

【浅倉秋成】いい意味で、結構原作と違っているところがあるので、映画の先入観がある状態で原作を読むと、それはそれで楽しい瞬間がありそうです。なので、映画を観たから小説はいいやと言わずに、原作も読んでいただけたらうれしいです。

――逆に、映画そのものもすごく楽しみにしている方がいると思うのですが、その方たちにもメッセージをお願いします!

【浅倉秋成】小説って、結構読んでいる途中の感想とかを、X(旧ツイッター)などでつぶやく方がいらっしゃって。まだ半分ぐらいで「こんなことになっている」「登場人物みんなクズだわ」というような感じで。だから、終わってみるとずれた感想にはなってしまっているんですよね。でも、その途中の感想も、その時の真実じゃないですか。その人は「クズばっかりだ」と思ったわけです。

一方で、映画って多分、観終わった後にみんなで感想を話し合ったりしますけど、観ている最中にってことはないので、“観ている間の自分の感想”を忘れないようにしていていただいたら、おもしろいんじゃないかなって思います。今この時点では「私こいつ嫌いだわ」って思うかもしれないですし、「この人好きだわ」って思うかもしれない。そういうのを忘れずに覚えておいていただけると。2回目に行った時に気付くこともあるかもしれないですし、自分にとっておもしろいことになるんじゃないかな?と思います。

各種ミステリランキングで話題沸騰中!原作本『六人の嘘つきな大学生』(著者:浅倉秋成)の書影


次作は割とファンタジーみたいなものを書いてみたい


――ありがとうございます。そして、新作『家族解散まで千キロメートル』についてなのですが、こちらは“嘘シリーズ完結編”とのことで、3作を書き終えての感想を教えてください。

2024年3月26日に最新長編小説『家族解散まで千キロメートル』も発売された


【浅倉秋成】“嘘シリーズ完結編”というつもりで書いたわけではないのですが(笑)。(2019年に『教室が、ひとりになるまで』を刊行し、その後の)『六人の嘘つきな大学生』から僕の作品を知ってくださった人がとても多くて、そこで“どんでん返し”とか、ミステリー的なものと僕を結び付けて認知してくれた人がたくさんいらっしゃったと思うんです。なので、そのキーコンセプトを揺るがさずに、少なくとももう1回はやるべきだと思って『家族解散まで千キロメートル』を書きました。3回は同じくらいの衝撃を与えなきゃいけない、同じくらいの熱量で何かを仕上げなきゃいけないと思って。今の気持ちとしては、それが皆さんに受け入れてもらえるか、祈るばかりです。

――本作のテーマを1つ挙げるとするとなんでしょうか?

【浅倉秋成】「家族」というのは、出版社の方からなんですけど、なんとなく「高校」「就活」について書いてきたから、じゃあ次はなにをやる?ってなったときに「家族」で作るかな、となりました。

――「家族ってなんだ?」とのメッセージもありました。浅倉さんにとっての「家族」とは?

【浅倉秋成】難しい質問ですね。これを書くに当たって、いろいろな編集者の方ともすごく腹を割って、自分の家族ってこうだった、ああだった……みたいな話をしたんですが、その結果見えたのは、“単一の答えなどない”ということでした。「家族は温かくてほっこりするものである」も「家族とは意外に邪魔な枷である」も、いずれも誰かにとっては正解だし、誰かにとっては間違いなので。「家族とは?」には、やはり答えが出せないというのがわかりました。僕にとっての家族も、やっぱり「今でもよくわからないもの」です。

――『家族解散まで千キロメートル』には、「どんな家族にも嘘が隠されている」というキーワードがありますが、浅倉さんが子ども時代に家族についていた嘘は?

【浅倉秋成】僕は千葉ロッテマリーンズのファンなんですけど、今のZOZOマリンスタジアムに子どものときに家族と行ったんですね。そのとき、ロッテの帽子がほしかったのにグッズ売り場で見つけられなくて、「ここにはロッテの帽子はないんだ」「他の球団の帽子コーナーでこの中から選ばなきゃいけない」と思って、なぜかヤクルトの帽子を手に取って、「これにする」って親に言っちゃったんですよ。そしたら、親が「えっ?」て。 「ロッテのはあっちにあるよ?」って別の場所を教えられたんですけど、その瞬間に恥じらいが勝っちゃって。あんなに山盛りにあるのに目の前にあるものしか見つけられなかったことが恥ずかしくなって、嘘を言っちゃったんです。その時、「神様、俺の本心に気付いて」「『なわけね~だろ』って親父が気付いてロッテのを買ってくれないかな」って思いながら、その意地っ張りを治せなかった。その帽子は結局かぶりませんでしたね。親に散財させちゃったっていう罪悪感もありましたし、ほしくないものをほしいって言っちゃった惨めさもありましたね。

――そのような子ども時代があったんですね。では、最後になるのですが、『家族解散まで千キロメートル』はどんな人に読んでほしいですか?あと、次作の構想などもありましたら教えてください!

【浅倉秋成】なにか、自分の役割とか常識とか年齢とか性別……によって、自分はこれをしとくべきだよねという空気を感じる瞬間ってあると思うんです。今はもう、あまりないかもしれないんですけど、例えば居酒屋でご飯を食べているとき「女の子はサラダを取り分けて」みたいな空気とか。それってなんでそうなの?っていう、そういう嫌な思いをした経験がある方には、何か刺さるのではないかなと思います。

次作はまだなにも決まっていないのですが、割とファンタジーみたいなものを書けたらなと。子どもが楽しいと思えるような。1回、そういうのやってみようかなと。その後もまたいろいろと冒険させてもらえたらなと思っています。


取材・文=平井あゆみ

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