コーヒーで旅する日本/関西編|関西随一のスケール感で進化を続ける、「TAKAMURA COFFEE ROASTERS」が目指す新しいロースターの形

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

コーヒー販売のカウンターに設置される焙煎機やエスプレッソマシンはデザイン性も考慮


関西編の第71回は、大阪市西区の「TAKAMURA COFFEE ROASTERS」。元々は、1992年に酒類と食品を扱う大型専門店として開業。2013年にワインと自家焙煎コーヒーの専門店にリニューアルしたのを機に、ショップの一角に大型焙煎機やエスプレッソマシンを導入。長年、ワインの取扱いで培った経験を生かして、生産者の顔が見え、個性的なテロワールを感じるコーヒーを提案している。開店から10年を経て、いまやコーヒーのラインナップは50種近くに上り、COEや希少なマイクロロットの自社輸入にも力を入れている。当初から、ユニークなスタイルと規模感で注目されてきたが、近年では、淡路島に立ち上げた巨大なファクトリーも話題に。関西のロースターの中でも一線画したでスケールで展開する「TAKAMURA COFFEE ROASTERS」は、今なお進化を続けている。

ヘッドロースターの岩崎さん


Profile|岩崎裕也(いわさき・ゆうや)
1985年(昭和60年)、大阪府豊中市生まれ。約8年のスポーツクラブ勤務時代に、浅煎りのスペシャルティコーヒーの醍醐味に出合ったのを機に、独学で知識や技術を習得。2016年にバリスタとして「TAKAMURA COFFEE ROASTERS」に入ってから焙煎にも携わり、ヘッドロースターに就任。7年の経験を重ね、現在は生豆の選定や新たな産地・農園の開拓にも力を入れる。2018年のジャパン コーヒー ロースティング チャンピオンシップ準優勝。

趣味のアンティークが取り持ったコーヒーとの縁

オフィス街で異彩を放つ、ガラス張りの倉庫風の店構え

大阪市内のビジネス街・西区の一角。立ち並ぶオフィスビルのただ中にあって、「TAKAMURA COFFEE ROASTERS」の三角屋根の大きな建物は、ひときわ目を引く存在だ。そもそもは酒類、食品を扱う大型グロサリーとして始まったこの店が、リニューアルを機にコーヒーロースターを新たに立ち上げたのは10年前のこと。開業当時からコーヒーは扱っていたが、自家焙煎まで携わるようになったのは、オーナーの松誠さんの、ある気づきがきっかけだった。

90年代以降、飲食店でもワインへの関心は高まり、質を追求するようになったが、コーヒーに関しては、食後のコーヒーにまでこだわる店は少なかった。“最後まできちんとした食事を楽しみたい”という思いから、ワインと同じく、食卓を充実させるものの一つとしてコーヒーを捉え、クオリティの向上を目指したことが、自家焙煎を始めた原点にある。折しも当時、スペシャルティコーヒーの普及とともに、コーヒーの生産方法や味覚表現が、ワインとの共通項によって語られるようになる中で、この店では長年、ワインを扱ってきた経験を生かしてコーヒーの提案を実践している、数少ないモデルケースとして注目を集めた。

吹き抜けの開放的な店内。約200坪という広大なフロアに、グロサリーにロースターを併設。ワインは約3700種類をそろえる


「当初はワイン専門店として考えていたそうですが、リニューアル直前の時期に、アメリカのサードウェーブコーヒーの動向を知ったことで、現地を査察し、ロースター併設の形になったと聞いています」とは、ヘッドロースターの岩崎さん。スポーツクラブでの勤務を経て、バリスタ、ロースターへと転身した、ユニークな経歴の持ち主だ。前職時代から、古着やテーブルウェアなどアンティークが好きで、20代の頃は月に一度、東京でショップ巡りに出かけていたという岩崎さん。その趣味の世界が、コーヒーの世界へとつながっていようとは、よもや思うまじ。

「当時、東京でよく寄っていたカフェの店主さんに、ノルウェーのビンテージ家具を扱う新しい店があるよと聞いたのが、代々木にできたばかりのフグレンでした。家具販売とコーヒーショップを融合したスタイルが話題になっていて、最初は家具を目当てに訪れたんです」。実は岩崎さん、この頃はまだコーヒーが苦手だったのだが、ここで初めて“おいしい”と思える一杯に出合うことになる。「映画の中で、ブラックコーヒーを飲む俳優がかっこいいという憧れはあったから、自分もいつか飲めるようにしたいと思って、無理に飲んでた時期でした。とにかく苦味が受け付けなかったのですが、フグレンで飲んだ浅煎りのコーヒーは紅茶に近い味で、最初は“これがコーヒーか?”となって。その疑問に、スタッフの方が丁寧に説明をしてくれましたが、コーヒーに関わる言葉がほぼわからなくて。なぜフルーティーな味なのか、自分がおいしいと思えたか、ずっとひっかかったままでした」

2階はゆったりと過ごせるイートインスペースに。各種イベントやセミナーも開催


以来、東京に行ったときにはフグレンに寄るのが常となり、やがてはフグレンでコーヒーを飲むことが目的になっていったという岩崎さん。すでに、この頃にはコーヒーにすっかり傾倒し、自宅にも器具を買いそろえるまでに。「好きが高じて、自分でもコーヒーを淹れたくなって。エスプレッソマシンもグラインダーも家に買って、ラテアートとかもしていました。完全に趣味でやっていて、家族にはちょっとあきれられていました(笑)」と振り返る。

コーヒー豆と合わせてドリップバッグやリキッドコーヒー、さまざまな抽出器具も販売


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