絶滅危惧の背景にコツメカワウソのペットブーム⁉かわいいだけではすまされない現実を飼育員が解説【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】

東京ウォーカー(全国版)

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野生を身近に感じられる動物園や水族館。動物たちは、癒やしや新たな発見を与えてくれる。だが、そんな動物の中には貴重で希少な存在も。野生での個体数や国内での飼育数が減少し、彼らの姿を直接見られることが当たり前ではない未来がやってくる、とも言われている。

そんな時代が訪れないことを願って、本連載では会えなくなるかもしれない動物たちをクローズアップ。彼らの魅力はもちろん、命をつなぐための取り組みや努力などについて各園館の取材と、NPO birthの久保田潤一さんの監修でお届けする。第7回の今回は、高知県立のいち動物公園でカワウソの飼育を担当する森本さやかさんにお話を聞いた。


二ホンカワウソが最後に目撃された高知県で、3種のカワウソを比較展示

――のいち動物公園では現在、コツメカワウソのハル(オス13歳)、メメ(メス13歳)、ツメナシカワウソのララ(メス推定14歳)、ゆるり(オス7歳)、ユーラシアカワウソのへレス(オス12歳)、ミント(メス4歳)の3種6頭を展示している。この3種を比較展示しているのは、日本国内でのいち動物公園だけだ。

高知県は絶滅してしまったニホンカワウソが最後に目撃された場所なので、カワウソの展示にも力を入れ、種類を並べて比較して見てもらえるようにしています。現在、世界各地に生息しているカワウソは13種類。そのうち最も体の小さいコツメカワウソと、3番目に体の大きなツメナシカワウソ、ユーラシアカワウソがいます。

コツメカワウソは東南アジアや中国、インドなどの川沿いやマングローブの周辺などに生息し、現地では水田などにも出没。タニシのような貝を捕ったり、川魚を捕ったりしますが、農作物には影響を与えません。

カメラ目線のコツメカワウソのペア。コツメカワウソは世界各地に生息する13種のカワウソの中で、一番体が小さい写真提供:高知県立のいち動物公園


ツメナシカワウソはサハラ砂漠よりも南のアフリカ、ユーラシアカワウソはコツメカワウソと重なる部分もありますが、ツンドラを除いたユーラシア大陸と、アフリカの一部にすんでいます。

比較展示をすることで、それぞれの体の大きさや顔立ちなど、違いが一目でわかります。見た目だけでなく餌の取り方や食べ方にも違いは表れているので、じっくり観察してみてください。特に注目してほしいのは前足。カワウソ類は泳ぎが得意で、足に水かきがあります。

ユーラシアカワウソは水かきが広く鋭い爪が特徴で、多くの場合前足を使わず、直接口で魚などを捕まえて食べます。もちろん、両前足でエサを押さえつけたり、はさんで持つこともありますが、水かきのついた平べったい形状なので、エサを握ることはできません。

ユーラシアカワウソはエサを前足で押さえて食べることもあるが、前足を使わず直接口で捕まえて食べることが多い写真提供:高知県立のいち動物公園


コツメカワウソはその名の通り小さな爪をもち、前足を器用に使ってエサを探して捕まえます。食べるときも前足でしっかりエサを持って食べるのが特徴です。これに対してツメナシカワウソは、その名の通り爪が生えていません。前足はコツメカワウソよりも器用で、水かきが小さく指も長いのが特徴です。握る力も強く、前足でエサを捕まえ、持って食べます。前足はエサをつかむのに適した形ですが、後ろ足は水かきが広くついており、泳ぐときに役立ちます。このように、前足一つとっても比較するとこれだけの違いがあり、興味が尽きません。

エサを前足で持って食べるコツメカワウソ写真提供:高知県立のいち動物公園

エサになるのは川魚をメインに肉なども食べる。こちらはツメナシカワウソ写真提供:高知県立のいち動物公園

展示場全景。左はツメナシカワウソ、中央がコツメカワウソ、右がユーラシアカワウソの住まい。各展示場の間には仕切りが設けられているので行き来はできない写真提供:高知県立のいち動物公園


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