コーヒーで旅する日本/九州編|パートナーと互いのスキルを活かし、伸ばし合い、山都町の交流の場に。「Appartement」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

抽出の際に気をつけているのは、すっきりと透明感のある味わいを引き出すこと

九州編の第30回は、熊本県・山都町にある「Appartement(アパルトマン)」。オーナー兼ロースターの齊木龍一郎さんは熊本県のスペシャルティコーヒーの先駆店、AND COFFEE ROASTERSで約7年にわたり在籍し、2022年1月に独立開業。AND COFFEE ROASTERSのオーナー・山根さんが「齊木さんは、右腕的存在だった」と話すようにコーヒーとの関わりは深く、しっかりとした方向性を持った上で開業したという印象が強い。市街地から離れた山都町で店を開いた理由や店づくりから、齊木さんが目指すコーヒーとの向き合い方が見えてきそうだ。

オーナー兼ロースターの齊木龍一郎さん(右)とパートナーの藤川里奈さん(左)

Profile|齊木龍一郎
1988(昭和63)年、熊本県熊本市生まれ。神奈川県の大学を卒業後、長く続けられる仕事を考え、自身も好きだったコーヒーに関わる職業を選択。地元に戻り、熊本市内の老舗喫茶店で2年ほど勤務する中で、AND COFFEE ROASTERSのオーナー・山根さんと出会う。2014年より約7年、AND COFFEE ROASTERSで働く中で、コーヒーの抽出から焙煎、店舗運営まで任される立場に。2021年11月に退職し、2022年1月、「Appartement」を開業。パートナーの藤川里奈さん(写真左)のアイス・スイーツブランド「ARBOL(アルボ)」と一緒に店を営んでいる。

長く続けられる仕事=コーヒーという直感に従って

店での抽出はハンドドリップのみ

齊木さんがスペシャルティコーヒーに興味を抱いた理由はさまざまある。純粋に味わいに惹かれたのはもちろん、AND COFFEE ROASTERSへの転職を決めた2013年ごろ、喫茶文化が浸透していた熊本のコーヒー業界において、極めて浅めに焙煎したスペシャルティコーヒーがまだまだカウンターカルチャー的な存在だったことが大きな理由だ。齊木さんは「実際に自分がスペシャルティコーヒーを淹れる立場になり、“生産者がしっかりと見えるコーヒー”だということを実感。生豆や生産者のバックボーンを知るにつれ、ますますコーヒーの世界にハマっていきましたね」と当時を振り返る。

齊木さんが思い入れのある産地、ルワンダの豆

AND COFFEE ROASTERS時代は、山根さんと一緒にルワンダに生豆の仕入れに足を運ぶなど、さまざまな経験を積んだ。もともと、コーヒーを長く続けられる仕事と考えた上で、業界に入った齊木さんだったが、よりコーヒーの世界の奥深さに魅了され、今に至っているというわけだ。

パートナーとの二人三脚で、地域に親しまれる店に

車道から店に至る細路地からのどかな雰囲気

独立にあたり、当初は福岡市内など都市部も候補地として考えたそうだが、パートナーの里奈さんの出身地だったことから郊外の山都町で開業を決意。もともと里奈さんは、山都町発のアイスクリームブランドの開発製造に携わった経験があり、齊木さん、里奈さんの独立時期がちょうど重なったのも大きい。「それなら2人で山都町で店をやろう」というタイミングだったというわけだ。

【写真を見る】店はもともと写真館だった古民家をリノベーション

屋号の「Appartement」はフランス語で住宅の一部という意味を持ち、齊木さんが焙煎・抽出するコーヒー、里奈さんが手作りするアイス、スイーツを柱とした「ARBOL(アルボ)」が一つの場所で同居していることから命名。ちなみに屋号を決めるにあたり、親交の深い COFFEE COUNTY の森さんからのアドバイスもあったそうだ。

コーヒーと相性の良い焼き菓子も充実。イートインのほか、テイクアウトもOKだ

「Appartement」は山都町役場や観光施設、商店などが集まる、山都町の中心部に位置。地元の人たちも日常的に足を運ぶエリアで、齊木さんたちと同年代の客はもちろん、近所の小学生、おばあちゃんやおじいちゃんなど幅広い世代の人たちが来店する。熊本では有名な観光名所の一つ、通潤橋も近いことから県外から来店する人も増えてきているそう。

豆が選べるドリップコーヒーは1杯500円〜。アンティークのカップもかわいい

店の柱となるのは齊木さんが淹れるコーヒーと、里奈さんが動物性食材や白砂糖を使わず手作りするアイスクリームや焼き菓子。もともと写真館だったという建物をリノベーションした店内は、白と木目を基調としたナチュラルな雰囲気で、写真館時代に使われていた昭和期のタンスを本棚として活用するなど、アンティークの要素も上手に取り入れる。カフェとして利用でき、開店直後に訪れ、コーヒーを飲んでいく近所のおばあちゃんの常連がいるといったエピソードが、「Appartement」の空気感をよく表している。

里奈さんが手作りするアイスサンド(550円)。アイスには有機農業が盛んな山都町のフルーツや野菜を使う

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